目次
- 「ニュース急騰・急落」が起きる仕組み
- 逆張りが難しい理由と主なリスク
- むしろ「入らない」判断が正解なケース
- 準備:経済指標と地合いの把握
- 逆張りの基本ロジック(例)
- エントリーの具体条件
- 決済と手仕舞い(時間・価格・部分利確)
- リスク管理の徹底ポイント
- 実戦プレイブック(当日の流れ)
- 戦略バリエーション
- 検証と運用の手順
- よくある質問
- チェックリスト(印刷推奨)
- 用語ミニ解説
「ニュース急騰・急落」が起きる仕組み
重要指標(CPI、雇用統計、政策金利、要人発言など)の発表直後、注文が片側に殺到すると 価格が一気に乖離します。市場参加者のポジション偏り(片張り)や、アルゴリズムによる 流動性刈り取り(流動性の薄い価格帯の突破)で、短時間に過剰な伸びが出るのが特徴です。
逆張りは、この「行き過ぎ」からの均衡(ミーン)への回帰を狙う手法です。ただし、 本質は「スナップバックの確率が高い局面を、厳格な損切りとともに小さく取る」ことにあります。
逆張りが難しい理由と主なリスク
- スプレッド拡大:発表直後はスプレッドが数倍に広がり、実質的な損益分岐が悪化。
- スリッページ:成行注文で不利約定が起こり、想定外の損失に繋がる。
- トレンド継続:「行き過ぎ」に見えても、本質トレンド継続で逆行が止まらないことがある。
- 板の薄さ:一度抜けると戻りが乏しく、捕まるリスクが増大。
- 心理バイアス:「そろそろ反転するはず」という期待でナンピン・損切り遅れが生じやすい。
むしろ「入らない」判断が正解なケース
- 発表結果がサプライズかつ構造変化(政策転換・ガイダンス変更)を示す。
- 上位足(H4〜D1)が強いトレンドで、指標がその方向を裏付けた。
- スプレッドが通常の3倍以上に拡大し、約定拒否や不連続ギャップが連発。
- 自分のルールに適合しない(距離・時間・パターンが未成立)。
入らない勇気が、長期の資産曲線を守ります。
準備:経済指標と地合いの把握
- 経済カレンダーの確認:発表時刻の前後15〜30分は原則手を出さない基準を設定。
- 相場環境の確認:D1/H4で方向、H1でモメンタム、M5/M1で実行。逆張りは基本「逆行」への賭けなので、上位足に逆らうほどロットは抑える。
- ボラティリティの把握:ATR・ボリンジャーバンドで「どれだけ行き過ぎているか」を定量化。
- ブローカー条件:最大スプレッド・最大スリッページ許容を事前に数値設定。
逆張りの基本ロジック(例)
以下は一例です。必ずデモや小ロットで検証してください。
コアコンセプト:行き過ぎ→収束
- 指標直後の初動では入らない(最短でも5〜10分は観察)。
- 価格がBB(20, 2σ)を大陽線/大陰線で拡張し、終値が再びバンド内復帰したら「過剰分の巻き戻し」を狙う。
- ATR(14)×k(例:1.5〜2.5)以上の伸びが短時間(例:5〜15分)で出たときのみ検討。
- VWAP(もしくはミドルバンド)を第一目標、反対側1σや直近の半値戻しを第二目標に設定。
エントリーの具体条件
買い(急落後の逆張り)例
- M1〜M5で下方向にATR(14)×1.8以上の伸び。
- ローソク足が下側2σの外でクローズ→次足でバンド内へ復帰。
- 復帰足の高値ブレイクで成行 or 指値エントリー。
- 損切り:直近安値の少し外 + ATR(14)×0.3のバッファ。
- 利確:TP1=ミドルバンド(もしくはVWAP)、TP2=上側1σ/半値戻し。TP1到達で50%利確+残ポジBE(建値)へ。
- 時間切れ:15〜30分でTP1未達なら部分 or 全決済。
売り(急騰後の逆張り)例
- M1〜M5で上方向にATR(14)×1.8以上の伸び。
- ローソク足が上側2σの外でクローズ→次足でバンド内へ復帰。
- 復帰足の安値ブレイクでエントリー。
- 損切り:直近高値の少し外 + ATR(14)×0.3。
- 利確:TP1=ミドルバンド/VWAP、TP2=下側1σ/半値戻し。TP1で半分利確+建値ストップ。
- 時間切れ:15〜30分で動かないなら撤退。
フィルター(推奨)
- 最大スプレッド:例)2.0 pips以下のみ実行。
- 連続実体幅:3本以上の同方向大実体→一旦見送り。
- 上位足確認:H1が強トレンドのときはロットを通常の1/2。
- 相関通貨の同時監視:ドルスト同方向で一斉急騰/急落は押し戻しが弱いことが多い。
決済と手仕舞い(時間・価格・部分利確)
- 価格目標:VWAP/ミドル/半値戻し/前回ネックを段階利確に設定。
- トレーリング:TP1達成後は直近のスイングまたはATR×0.5で追随。
- 時間ストップ:一定時間(例:30分)で想定のリバが出なければ撤退。
- 建値ストップ:半分利確後は、残りを建値(BE)に置き、損失再拡大を防ぐ。
リスク管理の徹底ポイント
- 1回の損失上限:口座に対して0.25〜0.5%を推奨。ニュース逆張りは不確実性が高い。
- ポジションサイズ:想定SL(pips)と許容損失額から逆算。
ロット = 許容損失額 ÷ (SL pips × 1pips価値)
- 連敗停止ルール:同日2連敗で終了。報復トレード禁止。
- スリッページ対策:許容スリッページ値を設定(広すぎ注意)。実運用は指値優先を検討。
- 通信・PCリスク:発表直後はサーバ負荷増。回線/端末の冗長化が望ましい。
- 記録とレビュー:「時刻・スプレッド・足種・ATR・結果」を必ず記録、週末に傾向を抽出。
実戦プレイブック(当日の流れ)
- −60〜−30分:指標内容と市場予想を確認。想定シナリオ(上抜け/下抜け/据え置き)を事前に箇条書き。
- −10分:チャートはM1/M5/H1を並べ、BB/VWAP/ATRをセット。最大スプレッド値をメモ。
- ±0分(発表):取引しない。最初の5〜10分は観察。
- +5〜15分:2σ外クローズ→次足で復帰の有無、伸びがATR×1.8以上かをチェック。
- +15〜30分:条件合致で小ロット執行。TP1で部分利確+建値ストップ。
- +30分以降:値動き鈍化なら時間切れ撤退。深追い禁止。
戦略バリエーション
1) リクイディティ・スイープ型
直近高値/安値の上(下)にあるストップを一度刈ってからバンド内復帰→逆張り。ダマシの可能性が高いため、より小ロット推奨。
2) VWAP回帰型
発表後の乖離が大きいとき、VWAP(出来高加重平均)への回帰をTP1とする。レンジ相場日と相性が良い。
3) 時間帯限定型
ロンドン・NYの重複時間に限定。アジア時間は流動性が偏るため、検証結果によっては除外。
検証と運用の手順
- データ収集:ニュース直後のM1〜M5データを抽出(CPI/雇用統計/政策金利など)。
- 条件の数値化:「2σ外→復帰」「ATR×1.8」など明確な数値に落とす。
- バックテスト:スプレッド拡大・スリッページを厳しめに仮定して検証。
- フォワードテスト:デモ→極小ロット→段階的に引き上げ。1か月単位でレビュー。
- ルール固定:勝っても負けてもしばらく変えない期間を設定(データ蓄積のため)。
よくある質問
Q. ナンピンは使っても大丈夫?
ニュース直後は速度と不確実性が高く、ナンピンが致命傷になりやすいです。 本記事の想定は単発・小ロット・短時間勝負。ナンピン前提の設計は避けましょう。
Q. 成行と指値、どちらが良い?
成行は約定しやすい反面、不利なスリッページが出やすい。指値は約定しないリスクがあるが、価格コントロールが可能。 まずは指値優先+約定しなければ見送るのが無難です。
Q. どの時間足が最適?
エントリー判断はM1〜M5、地合い確認はH1/H4の併用がおすすめ。時間軸をまたいで同じ物差し(ATRやBB)を使いましょう。
チェックリスト(印刷推奨)
- □ 発表前後の取引禁止時間(例:±10分)を守る
- □ スプレッドが許容範囲(例:≤2.0pips)
- □ 伸びがATR×1.8以上の「行き過ぎ」か
- □ 2σ外クローズ→バンド内復帰を確認
- □ 損切り=直近高安 ± ATR×0.3 バッファ
- □ TP1到達で半分利確+建値ストップ
- □ 時間切れ(例:30分)で粘らない
- □ 同日に2連敗したら打ち止め
- □ トレードノートに時刻・スプレッド・ATR・結果を記録
用語ミニ解説
ATR(Average True Range) 平均的な値動き幅。ボラティリティの指標。 ボリンジャーバンド(BB) 移動平均を中心に±標準偏差で帯を描く指標。2σ外は「行き過ぎ」の目安。 VWAP 出来高加重平均価格。短期の回帰目標として用いられる。 スリッページ 発注価格と約定価格の差。ニュース時は拡大しやすい。
※本記事はアドセンスポリシーを意識し、誇大表現や「必ず稼げる」等の断定表現を避けています。投資判断は慎重に行いましょう。
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