FXでは、同時に複数の通貨ペアで取引を行うことがあります。しかし、何も考えずに通貨ペアを選んでしまうと、リスクが偏ったり、資金効率が悪くなったりします。ここで役立つのが「相関係数」です。相関係数を使えば、通貨ペア同士の値動きの関係を数値で把握でき、効果的な組み合わせ戦略を立てることができます。
相関係数とは?
相関係数は、2つの通貨ペアの値動きの関連度を -1.0 から +1.0 の範囲で表す指標です。
- +1.0:完全に同じ方向に動く(正の強い相関)
- -1.0:完全に逆方向に動く(負の強い相関)
- 0:ほぼ無関係に動く(相関なし)
例えば、EUR/USD と GBP/USD は正の相関が高い傾向があり、一方で EUR/USD と USD/CHF は負の相関が高い傾向があります。
相関係数の計算方法
相関係数は以下の数式で求められます。
相関係数 r = 共分散(X, Y) ÷ (Xの標準偏差 × Yの標準偏差)
ここでXとYは通貨ペアの終値の変化率(リターン)を表します。実務ではExcelやMT4/MT5のスクリプトを使えば、自動的に計算できます。
例えば、過去30日間のEUR/USDとGBP/USDの終値を使って計算すると、相関係数が+0.85と出る場合があります。これは両者がかなり似た動きをしているという意味です。
期間別の相関係数の特徴
相関係数は計算期間によって結果が変わります。
- 短期(1日〜1週間):ニュースや経済指標で急変しやすく、相関が乱れやすい
- 中期(1〜3か月):通貨のファンダメンタルズや金融政策の影響を反映しやすい
- 長期(半年〜数年):国の経済構造や貿易関係による安定した相関が見られる
トレードの時間軸に合わせて期間を設定することが重要です。
主要通貨ペアの相関例
以下は一般的に観測される相関の傾向です(変動するため、あくまで一例)。
ペア1 | ペア2 | 相関係数(過去1年) | 特徴 |
---|---|---|---|
EUR/USD | GBP/USD | +0.85 | 欧州経済の影響を受けやすく同方向に動きやすい |
EUR/USD | USD/CHF | -0.90 | 米ドルの逆方向の影響を強く受ける |
AUD/USD | NZD/USD | +0.88 | オセアニア経済の影響で高相関 |
USD/JPY | EUR/JPY | +0.80 | 円相場の影響を受けて同方向に動きやすい |
通貨ペアの組み合わせ戦略
1. 高相関ペアを避ける
同じ方向に動きやすいペアを同時に持つと、利益も損失も倍増しやすくなります。特に初心者は、+0.8以上の相関係数を持つ通貨ペアを同時に保有するのは避けたほうが安全です。
2. 低相関ペアでポートフォリオを組む
0付近の相関係数を持つ通貨ペアを組み合わせれば、一方が損失でももう一方が利益になる可能性があり、トータルの値動きが安定しやすくなります。
3. 負の相関を利用してヘッジ
-0.8以下の相関を持つペアは、片方が上がればもう一方は下がる傾向があります。これを利用すれば、相場の急変時に損失を抑える「ヘッジトレード」が可能です。
実践的な組み合わせ例
- リスク分散型:EUR/USD + USD/JPY(中程度の相関)
- ヘッジ型:EUR/USD + USD/CHF(逆相関)
- ボラティリティ確保型:GBP/JPY + AUD/JPY(中相関だが値動き大)
実際のトレードシナリオ
例えば、EUR/USDが上昇トレンド、USD/CHFが下降トレンドの場合、相関係数が-0.9であれば、EUR/USDロングとUSD/CHFロングを同時に取ることで、どちらかが損失になってももう一方がカバーしやすくなります。
また、レンジ相場では低相関ペアの組み合わせを選び、全体のポジションを中立的に保つこともできます。
リスク管理と相関係数
相関係数を使うと、単純なロット管理だけでなく、ポートフォリオ全体のリスクを数値化できます。例えば、高相関ペア2つを各1ロット保有すると、実質的には2ロット同じ方向のポジションを持っているのと変わらないため、想定以上のリスクを抱えることになります。
このため、相関係数を参考にロット数を調整したり、逆相関ペアを組み合わせて保有リスクを均衡化する方法が有効です。
相関係数を活用したポートフォリオ構築手順
- 主要通貨ペアの相関係数を調べる(過去30日・90日・1年など複数期間)
- 高相関ペアの同時保有を避ける
- 低相関や逆相関をうまく組み合わせる
- ロット配分を調整してリスクを最適化
- 相関の変化を定期的にチェックして入れ替える
注意点
- 相関は時間とともに変化するため、定期的にチェックが必要
- 高相関だからといって必ず同じ方向に動くわけではない
- 短期と長期で相関が異なる場合がある
- ファンダメンタルズ要因や地政学リスクで一時的に崩れることがある
まとめ
相関係数を理解して通貨ペアを組み合わせれば、リスクを抑えつつ安定したトレードが可能になります。高相関ペアの同時保有を避け、低相関や逆相関をうまく利用することで、資金効率の高いポートフォリオを構築できるでしょう。さらに、相関は固定的なものではないため、定期的な見直しが長期的な安定収益のカギとなります。
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